肩書だけのアートディレクターにならないために
こんにちは。アートディレクターの横山です。
下っ端デザイナーだった私は現在アートディレクターになり、これから肩書だけのアートディレクターにならないために活用している会社の制度をご紹介します。
そもそもアートディレクターとは?
クリエイター向けの新卒採用のイベントで、「アートディレクターの横山です」と自己紹介をすると、時々学生の頭上に「?」が出ていることがあります。
そもそもアートディレクターとはどんな職種かご存じでしょうか。
アートディレクターはビジュアルの監督!
ゲームの世界のモンスターは、経験値を積むと「進化」することがよくあります。
同じように、主に広告クリエイティブに関わるデザイナーは、経験を積んで昇格すると「アートディレクター/通称:AD」という肩書に進化(キャリアアップ)するキャリアパスがあります。
アートディレクターの職務内容は、一言で言えばビジュアルの監督。
デザイナーが手を動かす役割であれば、ADは指示を出す監督者という立ち位置です。
もっと詳しく言うと、ADはプロジェクトのゴールを把握し、それはどのようなビジュアル設計であれば達成できるかを考え、デザイナーなどに進むべき道を示します。
その上で、プロジェクトの進行中にその道から制作物がズレたものになっていないか、クオリティの監督・管理をします。
広告クリエイティブは、グラフィックでもCMでも、基本的にはクリエイティブディレクターが長となり、アートディレクターとコピーライターの3人セットでつくります。
そこで練り上げられたアイディアを実現するため、グラフィックが必要であればグラフィックデザイナーを、文章であればライターを、WebであればWebデザイナーないしWebディレクターを、その他にも内容に応じてプランナーやフォトグラファーなどをアサインしたチームをつくり、仕事を進めていきます。
当社の場合、クリエイティブディレクターとコピーライターに相当する職種が2019年6月現在はないため、ADまたはWebディレクターがプロジェクトの長として、仕事を進めるケースが多いです。
アートディレクターの歴史は意外と長い
アートディレクターの歴史は、意外と長いです。
1920年頃、ニューヨークを拠点とした「ニューヨーク・アートディレクターズクラブ」という協会が設立。日本ではそこから約30年後の1952年に、「アートディレクションという考え方」を日本に普及するため「東京アートディレクターズクラブ」が創立されました。
私が勉強のために活用した、当社のありがたい制度
私がまだデザイナーだったとき、上流からの指示に対して、「本当にこれが最適解なのだろうか」「クライアントが求めているのはこういうものなのだろうか」と思いながら仕事をしていました。最終的には「クライアントの課題を自分の耳で聞いて、自分の頭で考えたい」と思うようにまでなりました。
しかし、たとえ課題を聞くことができても、解決策を設計する「考え方」に絶対的な正解はありません。自分自身で考えられる力を養い、成長するために、もっと勉強をして知見を広げたいと思いました。
会社の中にいて得られる知識や経験には限界がありますが、当社ならこの限界を超えることができます。なぜなら、当社の福利厚生の制度によって、上長の許可が降りれば有料のセミナーも全額会社の負担で参加できるからです。
先輩がアートディレクションの講座に行っていたので、その話も伺いつつ、私は最初にクリエイティブディレクションの講座、次の年にマーケティングの講座にそれぞれ半年弱の期間、通いました。
最初は講義の内容に追いついていくことに必死でした。しかし、回を重ねるごとに理解が進み、自分の成長を自分自身で感じることができるほど、知識が身に付いていくのがわかりました。
ちなみにマーケティングの講座に行ったのは、クリエイティブディレクションを学ぶ中で、マーケティングの知識があるのは前提条件として講義が進んでいたためです。マーケティングの知識が空っぽだった私は、「マーケは絶対的に勉強しておかないといけない」と感じました。
一緒に仕事をしている他のAD課の方々も、何かしらそのような勉強の機会を活用し、そこで得た知識を共有し合い、お互いを高め合って仕事をしています。今後もこの制度を活用して、さまざまなことを勉強していきたいと思っています。
余談ですが、当社には書籍手当という制度もあります。こちらもセミナー参加と同様、知識を得る機会として書籍の購入費用を会社が全額補助してくれます。勉強のために書籍を継続的に購入しようと思うと、1000円、2000円、時には4000円の出費は、お財布にダメージがくるもの。この手当を活用すれば知識を得る機会を逃すことなく、たくさんの知識を得ることができるので、とても助けられています。
もっと“進化”してやる! そう感じたとあるADからのメッセージ
私が自身のキャリアや仕事の仕方を考える上で、とても影響を受けた言葉があります。それは、東京アートディレクターズクラブが開催している「日本のアートディレクション展2018」でグランプリとなった大貫卓也ADの受賞コメントです。
「日本のアートディレクション展」を知ったのは、先ほど紹介したクリエイティブディレクション講座の講師で某超有名CDさんのFacebookでした。大貫さんの受賞コメントを絶賛している投稿を見た私は「行かないと一生後悔する!」と慌ててスケジュールを確認しました。
そのとき、ちょうど会期終了4日前の月曜日。
会場は銀座。
私は仙台オフィスに在籍。
「平日の昼間に東京行けばいいのか!」
「仙台から平日の昼間に東京!」
_人人人人人人人_
> 平日の昼間 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
あれ、、行けないじゃん…。
絶望でした。
どう考えても仙台オフィスで仕事をした帰りにぷらっと寄れる距離ではありません。
しょんぼりしながら火曜日を迎えると、奇跡が起きました。
「横山さん! 急遽すみませんが木曜日のクライアントへの訪問に同行してもらえませんか?」
ショックを引きずっていたので、最初は幻聴でも聞こえているのかなと思いました。
「横山さん? さすがに急すぎですよね…?」
そう声を掛けてくれた営業さんには、後光が差していました。
「いけます!!!!」
こうして無事に(?)展示を見にいく段取りができたのでした。
当日、私は業務を終えて閉館ギリギリに滑り込みセーフで入場できました。
会場には、テレビや街中の広告として見たことがあるものから、こんな魅せ方ができるのか!と感嘆してしまうものまでさまざまな作品が展示されており、飾られている一点一点すべてから刺激を受けました。
そしてその場で得たインプットを忘れてしまわぬよう、メモを取りまくりました。
自分のモチベーションが高まっていく一方で、自分はこんなすごい作品を作れるようになれるのだろうか、ここまで綿密に考え抜くことができるのだろうかと不安を覚えたのも事実です。
順番に作品を見て回り、最後に一番楽しみにしていた大貫さんの作品の前に来ました。
壁一面に展示されていた大貫卓也さんの作品集『Advertising is』。
そして、来場者がみんな立ち止まって読んでいる「広告は終わっていない」と始まる大貫さんの受賞メッセージ。
気付くと私は無意識に2回も読んでいました。
キューっと体から何かをえぐり出されるような、
自分が今までやってきたことがすべて分解されて、ゼロからもう一度組み立ててみろと言われているような、まさに、頭をガツーンとはりたおされる気持ちになりました。
今の自分の仕事スタイルはどこか流れ作業的で、いつの間にか日々の仕事をうまく捌くことが目的になっていました。本来ADとしてやらなければいけないこと、そしてデザイナー時代に感じていた「顧客の課題の本質を探り、考えたい」という思いもどこかに行ってしまったことに気付きました。
これからは初心を忘れず、これまで培った経験とスキルを信じ、そしてさらなる成長を目指して精進していきたいと思います!