ぼくの仕事がロボットに代替されそうな件
こんにちは、経理の佐藤です。最近の悩みは仕事がAIに淘汰されそうなことです。
オックスフォード大学の研究者が発表した「The Future Of Employment」という論文によれば、Accountants and Auditors(経理担当者、会計監査人)の仕事は技術の進捗に伴い、高い確率で機械に代替されてしまうそうです。また、行政の電子化が高度に進んだエストニアでは、税理士や会計士の仕事が消滅したとも言われています。
このままでは、私の仕事が無くなってしまいます。ロボットの能力がどの程度のものなのか、気になって夜も眠れません。そこで、経理業務の一部を試験的にロボットにまかせて、奴らの実力を測ってみることにしました。いったいロボットの事務処理能力はどの程度のものなのでしょうか。
RPAツールでロボットに仕事をしてもらう
港ではRPA(Robotic Process Automation)という言葉が話題です。これはソフトウェア上のロボットで仕事を効率化、自動化するツールのことを指しています。この記事ではRPAツールをパソコンにインストールして、ロボットに仕事をお願いした事例を紹介していきたいと思います。
ロボットに仕事を教える準備
RPAツールをパソコンにインストールしました。さっそくロボットに仕事をお願いしたいと思います。
ロボットはまだ自然言語での指示は聞いてくれないみたいでした。AlexaやSiriであれば「なんのことかわかりません」くらいの返答をしてくれそうですが、RPAは全く理解してくれません。
RPAにより業務を自動化する場合は、一つ一つの作業ステップを事前にロボットに教えておく必要があるようです。したがって、まず自分が行っている業務プロセスを整理しなければなりません。
業務フローの整理
ロボットに仕事を教えるため、業務フローをざっと整理しました。給与振込の業務はこんな感じの流れで行われており、経理担当者の作業時間は2~3時間くらいでした。
1.人事労務担当者が給与計算を完了
2.経理担当者がネットバンキングにログイン
3.経理担当者がネットバンキングの給与振込画面に移動
4.経理担当者が給与の振込金額を一件ずつ手入力
5.経理担当者が4で入力された振込データに誤りが無いかチェック
6.経理担当者→上長へ振込データの承認を依頼
7.上長は振込データを承認する
8.給料日に社員の口座に給料が届く\(^O^)/
※本当はもっと細く分けますが、簡略化しています。
RPA以前の効率化
RPA導入のため業務プロセスを整理すると、副次的な効果として現在の業務フローの問題点が見えてくることがあります。業務フローを見直すと、特に時間のかかっていた作業は上記4~5の工程であることに気がつきました。
この工程で些細な入力ミスにより合計金額がズレたりすると、すべてのデータを目検でチェックしなければいけなくなります。ミスがミスを呼び「入力→チェック」が無限ループのように繰り返され、くぁwせdrftgyふじこlpとなることも少なくありません。
この問題に関しては、給与計算ソフトの機能を使用して解決しました。
データ入力自体をロボットに任せることもできなくはないのですが、もともとある機能を有効に使うほうが効率的です。振込金額を全銀協フォーマットの形式で出力する機能を使用し、ネットバンキングにアップロードするように変更しました。
これだけでもかなりラクになりましたが、毎月毎月同じ作業を繰り返すのは面倒なので、ここからロボットに登場してもらいます。
RPAによる自動化
画面キャプチャの機能を使い、1ステップずつロボットに作業を教えていきます。この機能はRPAツールが監視している状態で人間が作業を行い、その作業をRPAツールに記録させるというものです。Microsoft Excelの「マクロの記録」に似ています。
ログイン時に必要なパスワード等はパス付きのExcelファイルに保管し、ロボットさんにはExcelファイルを開くパスワードを覚えておいてもらいます。また、ログイン時のワンタイムパスワード認証はセキュリティの観点からあえて人間が手入力することにしました。
なお、給与データファイルの指定には、「ファイルを開く」でお馴染みのダイアログを出して給与振込データを指定するようにしています。
結果
業務フローは下記のように変更され、経理担当者の作業時間は5分程度になりました。
1.人事労務担当者が給与計算を完了
2.経理担当者がロボットによろしく伝える
3.ロボットがなんかいろいろ頑張って承認依頼まで出す
4.上長が振込データを承認する
5.給料日に社員の口座に給料が届く\(^O^)/
まとめ
今回のケースでは、RPAそのものより「業務プロセスを見直す中での気づき」という副次的な部分で効率化ができたという側面が強いです。しかし「自動化」という観点ではRPAツールの威力がかなり強く、使い方次第では経理のルーチン業務の半分くらいが自動化できるのではないかと感じさせられました。
経理業務は完全に自動化されてしまうのか
RPAは業務の自動化に高い威力を発揮し、事務作業をラクにしてくれるものであることがわかりました。冒頭に書いた私の不安は的中し、経理担当者は世の中から淘汰されてしまうのでしょうか・・・。
実際にどうなるかは、あと20年後くらいの未来にいってみなければわかりません。しかし、現状の技術で100%の自動化は無理でしょう。
4月に入って上記で作成したRPAのシナリオが突然動かなくなることがありました。これは「三菱東京UFJ銀行」が名称を「三菱UFJ銀行」に改めたために起きたエラーでした。ネットバンキングトップページには「銀行名変更のご案内」が何度も表示されていたにもかかわらず、ロボットには「三菱東京UFJ銀行」と「三菱UFJ銀行」が同じ銀行を指すことが理解できませんでした。
ロボットはまだ「人間と同じ方法で意味を理解する」ということができないのです。
20年前には「”パソコン会計”なるものによって経理担当者が不要になる」と言われていた時期があるそうです。しかし、パソコン会計が普及した現在においても経理担当者はどの会社にもいるはずです。ベテラン経理の方の中には「無くなるどころか、昔より忙しい」と言う人もいます。
パソコン会計ソフトの普及は経理担当者を淘汰するには至りませんでしたが、経理担当者に求められるスキルを変化させました。帳簿が紙で管理されていた時代には、例えば綺麗な字で見やすい帳票を作れる人が重宝されていたかもしれません。しかし、会計ソフトの普及により経理にはPCスキルが求められるようになりました。
これと同様の変化がRPAやAI技術の台頭によって起こるのだと思います。今後、経理担当者にはロボットを上手く扱って仕事を効率化していくスキルが求められるようになるのでしょう。
20年後も食いっぱぐれないために、RPAの勉強は続けていきたいと思います。